研究会便り

2004年 9月例会参加報告
テーマ「おとなのための食育」
講  師:藤原誠太氏(藤原養蜂場工場長、日本在来種ミツバチの会会長
開催日時:平成16年9月11日(土)午後1時30分


藤原養蜂場(盛岡市若園町)パーラーに参加者22名が集まり、一ヶ月遅れの8月定例会を開催しました。喫茶スペースでコーヒーやアイスクリームを楽しめますし、店頭では様々な種類の蜂蜜が量り売りされています。トチ、レンゲ、リンゴ、ミカンやアカシア、ユリノキなど十数種の蜂蜜を試食しましたが、個人的には蕎麦蜜の強烈な存在感が気に入りました。まさに岩手の味の蜂蜜ですよ。お試しあれ。
皇居前で採取したという大スズメバチの標本があり、5mを超える大きさに驚きました。
これがミツバチの天敵なのか、という実感が湧きました。
副工場長藤原誠太さんのお話を伺いました。蕎麦はミツバチが居るか居ないかで収量が5割程も違う地域もあるそうで、ミツバチは自然循環に大きな役割を果たしています。
経済植林される針葉樹からは蜜が採れません。沢を守るトチの木やサワグルミ、畑に養分を涵養するレンゲの大切さ、外来種ですが土砂流出防止を担うニセアカシアや酸性雨の毒性を弱めるユリノキの見直しなど、ミツバチの立場で自然を考えることの効用を考えさせられました。
盛岡市新庄の住宅地での養蜂の現場を見学しました。西洋ミツバチはアフリカ原産で、ヨーロッパで飼いやすく蜂蜜の生産量も高いように品種改良され、明治初期にアメリカから輸入されてきたもので、日本の風土の中では「フソ病」や「チョーク病」、ダニの寄生とか大スズメバチに襲われ全滅することもあるそうで、人の手を借りずに生き延びることが難しいと伺いました。
巣箱の出口では常時襲来する天敵キイロスズメバチにミツバチが団子のようになっています。西洋ミツバチなので針で刺して戦っているそうです。短い見学時間中にも、キイロスズメバチがミツバチを補食して飛び去る姿を何度か見ました。
スズメバチも自然循環の一部なので、最低限の防御策として蜂蜜が仕込まれたペットボトルのトラップが仕掛けられ、中には無数のキイロスズメバチが入っています。蜂蜜漬けのスズメバチは健康食品に生まれ変わります。ハチは藤原さんが言われた「天与の虫」なのですね。
盛岡市郊外で棚田の稲刈りが始まったばかりの「飛鳥日本在来種ミツバチの郷」を訪問しました。秋晴れの透明な山村風景の中を赤とんぼが無数に飛んでいます。ふと、かつては水田に囲まれていた盛岡中心市街地でも、親しい風景であったことを思い出しました。
周囲にはクローバーや萩の花が咲いていました。ニセアカシアも豊富に見られます。
  太古から日本には在来種ミツバチが生息しています。野生のままなので神経質で、採ってくる蜂蜜の量も少ないため養蜂業には向かないとされてきたそうですが、藤原さんは日本の生態系に組み込まれ、日本の食文化にも利用されてきた日本在来種ミツバチを見直しているそうです。
  西洋ミツバチは一気に効率良く単花の蜜を集め、日本在来種ミツバチはそこら中の細かい花からバラバラにいろんな蜜を集める性質とうかがい、参加者の中からは、西洋文化と日本文化の違いとオーバーラップしているのね、という感想が聞かれました。
西洋ミツバチが罹る病気や天敵に対して、在来種には有効な対抗策が遺伝子レベルで組み込まれているそうで、だてに生き延びて来たんじゃないぞ、という日本在来種ミツバチのたくましさを感じます。
ミツバチ一匹が生涯を掛けて集める蜜の量はスプーンに三分の一程度の微量ということで、直接巣箱から掬い取ったその貴重な新鮮な蜜を、岩手県産南部小麦で焼きたてのフランスパンにたっぷり塗って試食です。発酵バターやカマンベールチーズが良く合います。
合わせて頂いた牛乳は岩泉「放牧山地酪農」中洞牧場のエコロジー牛乳でした。
参加者全員が満足した時間をいただきました。
近隣にはまもなく梁川ダムが完成し、「日本在来種ミツバチの郷」の環境も大きく変わりそうですが、盛岡市民の水源となれば周囲の農地や山林での農薬使用が制限されることになるでしょうから、ダムの是非は別にして、少しの農薬でもダメージを受ける昆虫から見れば環境は良くなるかもしれませんね、というお話もうかがいました。
自然循環環境と人間の関わり、食文化と生態系の密接な関係について学ぶことができた一日でした。