研究会便り

「食育が健全な人格をつくる」
盛岡スコーレ高等学校校長 
岩手食文化研究会副代表  宮本 義孝


小泉教授の話から

これは、少し古い例でしたけれども、それから20年あるいは30年経った今、本当にそういうことがきちっと皆さん方に認識されて安全な対策が講じられているかっていうと、全然、そうではないんです。
昨年10月に、小泉武夫という方から話を聞く機会がありました。東京農業大学の先生で、醗酵学が専門なんですが、大変有名な方です。その方から伺った話です。
九州のある都市のことです。コンビニエンスストアがありますね。今、そこでは、おにぎりとかサンドイッチとかお弁当とかお惣菜とか、すぐ食べられるものが置いてあります。これらの食べ物には、賞味期限があるわけです。生のものは、だいたい1日に2回ぐらい取り替えられるように期限が書いてあります。それで、その、売れ残ったもの、期限が切れたものをいったいどうするのかというと、従業員やアルバイトの人たちにあげたりはするんですが、そんなことじゃ処理しきれない。
で、業者に頼んで、処理してもらうわけですね。焼却するんです。ところがその業者の社長さんという人は私みたいな昔人間だったんですね。もったいないと思ったわけです。試しにそれを食べてみたんです。そしたら美味しいんです。味は全然変わらない。期限になった時から、その食べ物が急に悪くなるとは考えられません。結構、美味しく食べられるわけです。
初め、その処理業者さんは、自分のところの従業員にも配ったりしていたんですけど、なにしろ大きい都市ですので、いろんなところから集まってきます。それで思いついたのが、友人に養豚業をやっている人がいたそうで、それを譲ることにしました。
今は、配合された飼料で豚は育てられますけど、私らが子どもの頃、豚を飼ってる人たちは残飯で育てたんです。私も子どもの時よく見かけましたが、リヤカーに大きな樽を積んで、家々を回ってそこから出てくる残飯を集めて、それを煮て豚に食べさせていたんです。
  ところが、今は肉質の検査が結構厳しいので、下手に残飯を与えて、もし肉質が落ちるとか検査にひっかかるようなことがあっちゃぁいけないと、その業者は、飼料の豚とは別に分けて育てたんです。
そして育てて出荷する時、養豚業者の人たちは、子どもをとるわけです。次に育てる子どもを産ませたんですが、驚いたことにコンビニの残飯で育てた豚に奇形がつづいて生まれてきたというんです。本来は、生まれたうちの何頭に奇形が出たのかというようなことが話になるべきなんですが、ちょっと、そこのところは聞き損じてしまいました。でも地元の新聞がそれを取り上げたほどですから、かなりなものだったのでしょう。
これも、にわかには信じがたい話なんですけど、私の知人の娘さんが高等看護の学校に入って、親元を離れてアパート生活をするようになったんですが、ある時、突然身体の調子がおかしくなったんです。お母さんは長く看護師をしていた方なので、娘の食生活をちょっと確認したところ、食事づくりは結構面倒くさいし勉強も忙しいし、それで食事は近くのコンビニで買ったものだけですませていたんですね。
そのため、半年して体がおかしくなったんです。ちゃんとした食事を計画して、子どもにやらせたら治ったっていうんですよ。そういうことがあるんですね。


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