研究会便り

「食育が健全な人格をつくる」
盛岡スコーレ高等学校校長 
岩手食文化研究会副代表  宮本 義孝


捨てられる食料

  で、今、話にコンビニが出てきたんで、ちょっと脇道にそれますが、といっても、実はこれも大事な話なんですが、「賞味期限が切れたから、捨てる」の「捨てる」には大変な問題があるのです。名古屋大学の法学部の教授で森秀樹という先生がいるんです。1942年生まれですから、ほぼ私と同じ年齢なんですけれど、その方が、これからの国際社会の中で生きていかなければいけない日本の若い人たちに、真の国際人として、最低これだけは考えて欲しいという50項目を提案して解説している本があるんです。その中に、この食物の無駄遣いが取り上げられています。
  コンビニというのは、全国で5万店ほどあります。だいたい今話したように、弁当とかおにぎりとかサンドイッチとかお惣菜だとか、そんなのを置いています。コンビニの食べ物には廃棄時間っていうのがありまして、大きな都市では日に3回、それをやるのが一般的なんだそうです。ある大きな、全国で9000店ある大手のコンビニでのことなんですけども、捨てられる弁当など、そういうものが年間では430億円分あるんだそうです。
  コンビニばっかりじゃない。大きい都市にはハンバーガーショップというのがありますよね。お客が注文すると、さっと出せるように前もって作っておきますが、10分以上たつと味が落ちるんです。それで時間がたったものは捨てるんですね。それから、回転寿司というのがあるんですが、今、回転寿司も鮮度が命って、結構新鮮なものを出すようになったんですけれど、ベルトの上で20分ぐらい誰も手をつけずに寿司が回っていると、それも捨てられるんです。そうじゃないと、イカの端が萎びているような店だと、もう、お客さんは入らないわけです。
  それから、ファミリーレストランなんかでは、ハンバーグを注文すると、付け合わせとしてレタスの刻んだのがいっぱい出てきます、これもほとんど手をつけられない。だから量は少しでいいんですよ。けれどハンバーグの端に、ちょっと食べられる程度のレタスだと、いかにもしぶっているような感じです。やはり捨てるくらいのものが見栄えとしてはいいわけです。そして半分以上は捨てられるんです。
  この残飯として捨てられるものが、日本では全食料のおよそ2割です。重さにすると年間で1000万トンだそうです。ただ、1000万トンといわれても、あまり大き過ぎてピンときません。この間、インドネシアの沖で大きな津波があって、被害を受けた国にタイがあります。その国の全人口が食べる量、これが年間500万トンなんです。だから倍のものが捨てられているんです。
  で、昔は生活の中で残飯っていうのがあまり出なかった。さっき話しましたように、豚を飼う時は残飯だったんです。私も子どもの頃はイヌとかネコを飼っていましたけれど、餌はみんな残飯です。残ったご飯に味噌汁をかけて、あとは食い残しの煮魚をちょっと乗っけたりして。今はそんなことをしないでしょう。今は、ちゃんとしたペットフードです。年商3000億円の業界だそうです。だから残飯をやっても、味に肥えているイヌやネコは見向きもしないそうです。
  私の友達がね、美味しかったと言うんです。晩酌の時、何もなかったんでね。ドッグフード食べたんですって(笑)。そうしたら、いつも俺が食べているのよりよっぽど美味しいって言うんです(笑)。私にも試しにやってみろって言うんです。けど、やっぱり勇気ありませんでした(笑)。
だから本当にね、私らが何の気なしに過ごしている生活の中にも、実は、こういう大きな問題があるんです。そして、今、いろいろ言われていますが、日本で自給できるのは米だけで、ほとんどは外国から買ってるわけです。それをどんどん捨てている。脇道として話はしましたけど、この問題もぜひ取り上げて、いろいろと考えてみる必要があるんではないかと思います。
なぜ添加物が使われるのか
では、なぜ、こういうふうに農薬が使われ食べ物に添加物が入ってくるのかということですが、これはもうやむを得ない、添加物を入れざるを得ない状況があるんです。
パンは、今、米に次いで準主食みたいなもんですね。それで話をしますと、皆さんの中には、パンを自分で作った方がおられると思うんですけど、イースト菌で膨らんだ生地を油を敷いた鉄板の上に乗っけますよね。そしてオーブンなんかで焼きます。出てきたらパンは鉄板にくっついています。だからスクレーパーでそぎ落とします。これが普通のパンなんです。
ところが、大手のメーカー、何万個何十万個とパンを作る会社では、そんなことやっていたらとっても手間がかかる、不経済なわけです。それで、パンが鉄板にくっつかないように工夫されるわけです。運行窯という大きな窯があって、入り口のところにパンの生地を入れると、床のベルトが動いて出口から出てくるんですが、その間に焼きあがるわけです。パンの種類によってベルトの速度を変えるんですが、出てきたパンが勝手にポロポロポロとこぼれ落ちるようにした方がいいわけです。そうするには、そこで何かが入るわけですよ。鉄板にくっつかないために、例えばパラフィンですね、流動パラフィンが入ってくるわけです。
それから、パンでも、例えば作ったその日に売り切ってしまうメーカーもあるんですが、それだと中に何も入れなくていいわけです。ところが、大手のメーカーになるとそうはいきません。仙台の工場で作ったら、その夜のうちに、山形とか盛岡とか秋田に運ばれるわけです。そこで仕分けられる。そして、さらに小さい都市、町や村に行くわけなんです。出来てから一日ぐらいはかかるんです。それから店に卸されるわけです。
ところが、盛岡は人口が多いから、人の流れはいいんですけども、小さい都市とか町とか村とかでは、あまり売れませんでしょう。二日、三日残るのは当たり前です。よっぽどひどくなれば業者は取り替えますが、そうでなければ何日も置かれるわけです。そうすると、硬くなってはいけない。それからカビなんかが生えないようにしなければいけない。
カビはパンには生えやすいんです。生協のパンを、二、三日置いといてみてください。湿気のあるような時だったら、すぐカビが生えます。でも、それじゃ困るんです。それでいつまでも柔らかくするため、カビを防ぐためにね、臭素酸カリウムとかプロピオン酸、ソルビン酸なんかが入ってきたりするんです。入れないと大きなメーカーはどうしようもないんですよ。
それから、もうひとつ。今、言いましたように、効率の良さとか保存とかばかりでなく、見た目、やっぱりきれいなパンを作りたいわけです。例えば食パンなんか、原料は小麦です。小麦というのは、元々、茶色っぽい色なんです。だけど、食パンを見てください。真っ白でしょ。あれは、漂白しているからなんです。漂白するというのは塩素を吹きかけるんです。つまり色素を壊すんです。だから白くなる。で、塩素は、人間の体には害なんです。こうやって、パンには、いろんなものが入ってくるんです。もちろん全部が全部、害があるわけじゃないんです。パンはいろんな種類があるから100ぐらいは添加物が入るんですけど、実際には10ぐらいですか、害があるのは。
東京銀座の木村屋さんが、日本人に似合うパンといって、アンパンなるものを作りました。丸くて中に餡が入っているんです。でも、アンパンの飴、もし、あれが全部小豆だったらものすごくコストが高くなるんです。だから特別高級なのは別として、普段われわれが口にするアンパンの餡は小豆じゃないんです。イモなんです。業者はイモ餡って言ってるんです。そのイモ餡は、薄青い白っぽい色なんです。それには、小豆で作った餡のように色をつけるんです。ほんの少し溶かして入れただけで、パッと大きな釜いっぱいの餡、みんなああいう色になるんです。
それから、餡だから甘くするため砂糖や水餡を入れます。ところが、それだけではあんまり甘くならないんです。甘くするためにはたくさん入れなければいけないから、すごくお金がかかるんですね。それでサッカリンを使うんです。この間、生協のパンフレットを見ていたら、サッカリンはあまり害がないと思われるので有害物質リストから外すってことが書いてありましたけども、サッカリンは、ずっとアメリカでは発売禁止なんです。発ガン性物質だということで。多分、これは摂取量がわずかで、人体にはほとんど影響がないと判断されたからなんでしょう。
サッカリンの甘みは砂糖の300倍から500倍だそうです。私が子どもの時に、サッカリンっていったいどんな味がするんだろうかと思って、小さい塊を舐めてみたんですけど、あまりに苦いので思わず吐き出しちゃったという経験があります。それが溶かされて薄められると甘いんですね。それで、このように、われわれの準主食のようなパンにさえ、そういう添加物が入ってくるんです。どうしても利益を第一に考えるからなんですね。
それから、会社が大きくなると消費者の姿が見えなくなるんですね。自分の家族にそんなものを食わせるといったら躊躇します。でも、全然知らない人だったら、たいして気にならないんです。だから、農薬の使用がはっきり見えない外国の野菜などに土をつけて、国産を装って売ったりするわけです。
それから、大きくなると組織が複雑になって、例え多少良心的な考えを持つ人がいても、それは取り上げられないんです。小さい会社でしたら、社長さんの一存ですむんですけど。こういうふうに上手に隠されてはいますけれど、問題はいっぱいあるんですよ。
テレビなんか見ていると、パンや菓子を持った可愛い女の子がニッコリと微笑みかけてきますね。でも、どんなに微笑みかけられても心を許してはいけないのです(笑)。だから、コマーシャルを見て、そのコマーシャルの裏にある事実をきちっと抑えるというのも、これから生きていくうえで大事な生活の知恵なんではないかと思います。
今、産直とか地産とかが取り沙汰されています。だが、地元の物だからといって、必ずしも安全・安心というわけではありません。やはり、農薬とか添加物とか、そういう問題にきちっと見極めのつけられる知識が、われわれには必要なのだと思われます。その上で、一生懸命取り組んでいる良心的な生産者たちを支援していくことが大切です。殊更、食べものについての過剰な反応は必要ないけれど、無知であってはいけないと思います。
正しい判断を持って、家族、特にこれからの社会を担う子どもたちの健康とか命とかを守ってやる責任が、われわれにはあるんではないかと思います。

 

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