研究会便り

2009年 3月例会参加報告
テーマ「農業への挑戦と将来」
講  師:橋本正成(株式会社銀河農園 代表取締役 / 薬剤師)
開催日時:平成21年3月7日(土)午後1時30分


3月例会が盛岡市のおでってホールで開かれた。今回は小売業から新規参入した銀河農園の橋本正成社長をお招きし、今後の農業を展望していただいた。異業種の「普通の目」で、深刻な担い手不足にある農業の産業化を語った。ユーモアをまじえ経験にもとづいた豊富な話題は示唆に富む内容だった。

橋本社長は2004年農業法人を設立しドラッグストアチェーン経営から、農業に転身。紫波町でトマトの水耕栽培を主力に直播による水稲も手がけている。通年出荷のためにハウスによる水耕栽培を採用する。

農業の再生には「新しい血を入れることが不可欠」と説く。しかし現実には事業を始めたころは参入を拒んでいるかのような印象さえ受けた。まず一定の規模以上の農地確保を迫られた。農地は不動産業者が仲介するのではなく地域の農業委員会を通じてあっせんしてもらうのだが、紫波町に運よく農地を確保できた経緯も披露。「いい農地はまず親戚に提供するから部外者にはいい農地を得られない」。

農業が継続できなくなってようやく新規参入組に農地がめぐってくるのが実情と訴えた。

企業化の遅れも指摘。一般的な組合形態は「もうかるときには平等に利益を分配するが、うまくいかなくなると組合長が責任をかぶり損する組織」として、現代にあわなくなったという。株式会社の場合、出資などに制限がある。

オランダの農家は気候リスク分散の狙いもあって国境をこえて農業を展開するという。日本でも「外国に出て行くなどして外国の労働力活用を考える時代」と訴えた。

「就農していきなり社長というのは大変」。ほかの業種なら当たり前の学ぶ期間がない。農業は初期投資がかかり経験がない場合のリスクはさらに大きいから「丁稚奉公の仕組みが必要」だと強調する。新規就農者の受け入れ体制の構築を求めた。

「お客様は気ままな神様」が持論。安い農産物へ流れるかと思えば、値の張る商品にも手を出す。ひとつではくくれない。消費者は規格外商品を求める傾向が強まっているが、市場ではそうした商品を受け入れない現状がある。「作り手と買い手の連絡が悪い」と指摘した。ヨーロッパでは、ヘタのないトマトが流通するのは珍しくないが、日本ではヘタのないトマトは加工にしかならない。「畑の農産物の半分は捨てられている。これを救いたい」と話した。

消費者の要望からかけ離れ旧態依然としていては農業はたちゆかなくなる。「規制に守られた企業は必ず没落する」。穏やかに語るものの、橋本社長の危機感は強い。農家個人の努力の成果を評価する仕組みがなく、流通の過程などで品質のよいものも劣るものも平等に扱うことの弊害も指摘した。

イオンといった大型店の売り場の確保が命題だ。安定供給のため量の確保が不可欠だが、取引を打ち切られた場合のリスクも大きく、販路は目下「切実な悩み」という。

講演の後、農地の課題など参加者の質問も活発に行われた。将来の夢は「ブラジル出張が日常的になるような企業にしたい」。本物の食を守り、これからの基幹産業に農業を育成するうえで新しい考え方が必要と改めて考えさせられた。