研究会便り

食文化研究会例会「食・農塾」
岩手の風土がもたらす食材、未来への思いを語ろう!
~「岩手に残したい食材30選」続編の出版に向けて~


日程
2012/12/16(日)13時~
場所
アイーナ(県民情報センター)7階学習室4
プログラム

1.会員の活動報告
2.「食材30選」続編出版に向けての意見交換


1.活動報告

報告1.中村修氏

「岩手食文化研究会の活動から―設立からこれまでの経緯の概略―」

中村氏:岩手食文化研究会の設立に携わり、JA職員として事務局を担当。
現在、当研究会事務局次長


1997(H.9)年の設立当時から現在までの会の在り方の変遷を、組織面、活動内容など多角的な情報を交えたスライドを多用しながら、入会後数年の会員にも分かり易いよう、時系列的に説明いただいた。
(↓画像をクリックで拡大)

報告2.高橋智氏

「わたしが岩手食文化研究会に入った理由」

高橋氏:北海道出身。
東京で管理栄養士として高齢者施設勤務、自然食品店勤務、NPOみどりのふるさと協力隊(静岡県)を経て、現在は花巻市東和町の自然農園・ウレシパモシリの農業研修生。当研究会の今年度新規会員
(※ウレシパモシリ…ウレシパモシリとはアイヌ語で「自然界そのもの」、「育み合う大地」といった意)


東京の高齢者施設で、提供する食事の献立作成や管理の中で行われる効率化に矛盾を感じる。
みどりのふるさと協力隊では、地域おこしや手作りの食品加工の手伝いを。
協力隊時代のH23年に遠野に派遣され、地元女性グループのソバ作り、加工品の販売等の手伝いをする機会があり、食文化を伝える活動がしたいと想いを強くする。
全国を旅し、東北でも一番気に入った岩手で就農することを決意。食べ物のおいしさ、くらす環境の良さ、に惹かれた。
県内各地巡っている中で、葛巻では水車で挽いたそば粉の手打ちそばに感激。川井・タイマグラに宿泊した際には、自身の目指す暮らしであると実感。
現在所属する農園では、パーマカルチャーやバイオダイナミックの手法を取り入れ、お米や雑穀、野菜は無農薬・無肥料で作り、豚や鶏は「化学薬品・抗生物質・輸入飼料」無投与で育てているとのこと。
自然農園での生活を通し、理想の暮らしに近づけるようになりたい。


○岩手の風土・文化を気に入ってくださり、県民の一人として嬉しく思いました。今後の当研究会への活動参加にも期待が高まります。


報告3.渡辺哲哉氏

「農業からみた在来種・地域固有種の可能性」

渡辺氏:広島県出身。東京での出版社勤務を経て、1996年沢内村(現・西和賀町沢内)へ移住し農業を開始。
現在は、りんどう等花き(80アール)、米や野菜(40アール)の栽培を行っている。

○渡辺氏にお話しいただいた内容は、自身で作成、配布いただいた資料が非常に具体的かつ端的にまとめられていたため、資料より一部抜粋し以下に記載いたします。


農家は、農家の種を残したい、という関心が薄い気がしている(しかし、新品種への関心は高い)
冬の長い岩手だからこそ、夏は食材、冬は加工品の二頭立て営農の確立が重要と考える
食材自身においても、食糧基地としての大量供給(F1種)+こだわりの固定種在来種の2本立てが理想的と考える。 →F1品種は、生育の揃いもよく特定の病害虫に強い面を付加して作った人工的な種。農家の都合は反映されているものの、「味」や本来持つ「生命力」といった点は在来種・固定種には適わない。
郷土食など地域の食文化は、在来種・固定種により形成されてきたので、岩手に残る「種」を大事にしつつ後世に継いでいくことは、食・食材に関わるとても重要な部分と思っているし、周辺情報をきっちり紹介しながら、食材や加工品を提供できるのは在来固定種の強みであると考える
地産地消の面だけでなく、遠隔地への販売を考えた時にも、在来品種は有効と考える
(自身も行っている)インターネット販売は、重要な手法である一方、注文待ちになってしまう状態が問題である(販路拡大という課題)
在来品種については、必ずしも「岩手由来」にこだわらなくてもよいのではないか。
自然のもの、山のもの、木のぬくもりを感じられるものは、今後一層求められていくと考える
岩手の風土に基づいた上で、種・農・環境・食をトータルに提示することが大事ではないか(土着性、故郷性(心のふるさと)を取り戻す)
ベンチャービジネスの感覚ではなく、農の営み、環境への取り組み等の暮らし方を勧めるような、あるがままの無理のない提案を(ビジネス型v.sくらし型)


2.参加者間の意見交換タイム

これから「食材30選」の続編へ取り組みを開始するにあたって、これまでの活動や今後への期待、希望について、自由に発言をいただく機会としました。


千葉さん:「食材30選」は、レシピよりも、生産者の想いを重視した本となったが、それは、当時生産者の苦労を載せた料理本がないことを残念に思っていた事が出発点である。

高家さん:元は病院で管理栄養士をしていた。予算の範囲内で地物を使うよう心がけていたが、途中から予算縮小により、外国産、冷凍品に頼らざるを得ないようになってしまった。そのシステムは変えられず、現在も続いている。献立に郷土料理を取り入れるにしても、地元の食材が使えないジレンマがあった。
現在、葛巻で経営している「みち草の驛」では、水車でそば粉を挽くところから実践しているが、自身としては、そこからが食文化であり、郷土料理を伝えるならばそのストーリー性が残らないと意味がないと考える。しかし、それを現代で実践していくとなると、コストの問題もあり困難と分かっている。そばの他にも、例えばしだみ餅(どんぐりの粉から作った餅)についてだと、原料となるしだみの保存方法についての手間がかかるやり方を伝えきれていない点があるなど、心残りは多々ある。どうにか知恵を残す方法を考えたい。


田沢さん:現代の各家庭のエンゲル係数は平均22%程度というデータがあるそうだ。昔は70%位占めていた(食べるのに精いっぱいだったことが伺える)ことから考えると、我々はもう少し食べ物にお金をかけ、良いものを食べてもいいのではないかと思う。


山田さん:食材30選の続編を作るにあたっては、20選くらいに厳選し、その分先人の知恵、伝えていく苦労、岩手のくらしや生業(地場の工芸など)についても織り交ぜても面白いのでは。そういった構成で、1つの食材に関して前作の2ページから4ページに増やすのでもよいのではないか。


大谷さん:発表者の渡辺さんのHPについて。物語性があり、HPにとって非常に有効なことと思う。概して、自然栽培、有機栽培の農業をする人たちは、固有種を大切にする傾向にあると感じる。そうでない人たちは、取扱いの品種の入れ替わりが激しいと感じる。


宮本さん:食文化研究会に入っての感。いろいろな人との出会いがあったことが、楽しかったし、良かったこと。活動していくなかで感じているのは、自分たちの価値に気づけていない、ということ。食文化研究会としては、第三者的立場でそれを評価→認め→支えていく方法を考える必要があるのではと考える。会員には、もっと各自がテーマをもって活動に参加してもらいたいという希望もある。


○今回の意見交換を通して、「岩手の食文化」という1つの切り口に対しての、個々の考え・想いは実に多岐に渡っていると感じました。「食文化」とは単に地元の食材を消費するとか「郷土料理」を作り食べる事で守ることができるのではなく、その料理の背景にある事象(気候風土、時代背景、農業・漁業事情…等)含めた理解も必要になってくると思います。「食材30選」続編の編集にあたっては、そこを加味して反映させた形にできればと思いました。読んだ方が自分達の郷土の食と文化の価値に気づく1冊となることを願って…。

(小西)